218人の先輩開業医からのアドバイス(後編) -皮膚科・眼科・整形外科・消化器内科・循環器内科
218人の先輩開業医からのアドバイス(後編)
前回に引き続き、「218人の先輩開業医からのアドバイス」をお届けいたします。
後編は皮膚科・眼科・整形外科・消化器内科・循環器内科の先輩開業医からのアドバイスです。
皮膚科
皮膚科で集患上のひとつの分岐点になるのは「自由診療」という声が聞かれました。それ以外は、丁寧な診療による口コミ、地域の特徴に合わせた立地選定など、比較的オーソドックスな工夫を重視するアドバイスが多く寄せられました。
自由診療がひとつの分岐点
「自由診療をどれだけするか、また価格をいくらに設定するかが悩ましいと思います。ただ、保険診療で間口を広くしておいたほうが、無難かと思います。」
-近畿地方、開業5年以上10年未満
「診療報酬が安いので自費診療と組み合わせながら、集患を目指すのが良いのではないかと思う」
-近畿地方、開業5年未満
丁寧な診療で口コミに
「とくに広告などはまったく出しませんでした、が口コミでどんどん患者さんは増えました。一番大事なのはありきたりですが、誠実、丁寧に当たり前のことを当たり前にやることでしょう。」
-首都圏、開業5年以上10年未満
「きちんと診断ができれば、患者は増えてくると思う。皮膚生検や小手術もすれば患者は大変増えます。」
-首都圏、開業10年以上15年未満
地域性に応じた立地選定を
「初診の患者さんはネットで探して来ることが多い。ホームページの1ページ目に診療時間・地図が一目で分かりやすくなっていると良い。また、これは反省点だが、地方都市は車での来院が多いので駐車場は多めに確保したほうが良い。」
-首都圏、開業15年以上20年未満
眼科
眼科では高齢者で視力が低下した患者さんでも、訪れやすい立地、歩きやすい院内が大事との声が聞かれました。また集患と直接には関係しないポイントですが、「クリニックの成長に合わせた設備の充実化」という設備投資の考え方も参考になります。
高齢者を意識
「待合室の広さやバリアフリー対応は肝要だと感じます。予約制にするかどうか、電子カルテか紙カルテにするかはどちらでもいいと思いますが、見やすく分かりやすいホームページを作ることは最低限必要だと思います。」
-中部地方、開業5年未満
「基本的に患者さんは、半径500メートルです。せいぜい1km。高齢で、視力の悪い人達が相手ですので、駐車場は広めにとって、駐車しやすく。面する道路は生活道路で、広めでも、それ程スピードの出ない場所。交通量は多すぎもせず、少なすぎもせず。スーパーや学校のそばは良い場所でしょう。地域の高齢者にいかに認知してもらうかです。一番は高齢者の口コミです。よって、若い人向けのSNSは微妙。」
-中国地方、開業5年以上10年未
立地はやはり重要
「既存の眼科の先生の近くの開業は難しいのでよく考え、いろいろな人から意見をもらって開業するべきです。」
-中部地方、開業10年以上15年未満
「眼科に限らず患者ニーズに合わせた立地と開院時間が大事だと思います。何か人の嫌がることを我慢してすることで、集客の悩みをカバーするくらいのバランス感覚で行くのが良いと思います。」
-近畿地方、開業5年以上10年未満
設備投資は慎重に
「眼科は初期の設備投資が高額になるので、大学病院などでは最新の機器を用いていたかもしれないが、いろいろな機器がある方が診療の質は上がりますが、開業すると経営者でもあるので、そこは我慢して採算を考えて初期投資はおさえて、軌道に乗ってから徐々に設備を充実させていく方が安全です。」
-九州地方、開業10年以上15年未満
整形外科
整形外科だけでなく内科の患者さんを取り込んだ「地域のかかりつけ医」になること、病診連携が重要になること、などのアドバイスが寄せられました。これもまた直接集患には関係しない点ではありますが、リハビリにどの程度注力するかはクリニック経営上の大きな分岐点になるとの意見が寄せられています。
内科の患者を取り込む
「ビル診では他の診療科が入っているところではなく単独で入るほうがいいと思う。同じような栄養指導、生活指導をしても痛風と高脂血症では診療報酬が2倍以上違う。内科の患者をいかに取り込むかが勝負と思う。」
-不明、開業5年未満
病診連携
「やはり、マーケティングは開業時に重要なポイントになってきます。あとは、病診連携がスムーズにできる環境を開業前から作っておくことも患者の立場から見ても大事なことです。」
-中部地方、開業15年以上20年未満
「だらだらと患者をつなぎとめるのではなく、迷った症例や自院でできない検査などは大病院に送った方が結果的には患者さんの信頼につながり、集患の一助になる。」
-中部地方、開業5年以上10年未満
リハビリテーション強化は慎重に
「広いリハビリを備えた開業には十分注意を払う必要がある。面積の大きさに伴う、家賃だけでなく、リハビリスタッフの確保や賃金上に収入が見合うかどうか綿密にシュミレーションする必要があると思う。」
-首都圏、開業20年以上
「「これから」でしたら、リハビリテーションの強化、連携の強化、訪問診療、介護保険への参入でしょうか。」
-中部地方、開業20年以上
消化器内科
消化器内科におけるアドバイスとして最も多く寄せられたのが、「苦痛のない内視鏡検査」を徹底して極めるという点でした。
一方、あえて内視鏡を導入せずに肝臓病専門特化のクリニックにしたという声もありました。こうした特化型クリニックの場合は、後述の循環器内科の項で見るように、病診連携が重要になってくるかもしれません。
苦痛のない内視鏡検査を極める
「まったくしんどくない検査を提供すること。今まで色々と経験し、いかに楽にするかを追求してきたかとは思うが、プライドを捨てて麻酔下での検査を安全に行うこと。あそこで受けると楽に受けられると思っていただけると自然と増えてくる。」
-近畿地方、開業5年未満
「慣れているはずの自らの技術であっても、開業当初はより慎重に間違っても事故のないようにされる方がよい。丁寧に苦痛なく内視鏡が受けられれば、自然と患者さんは集まってきました。」
-首都圏、開業5年未満
「口コミが一番、苦痛のない内視鏡、大腸ファイバー、胃内視鏡をしてもらえると、評判が広まれば、患者は増える。」
-近畿地方、開業5年以上10年未満
専門特化
「開業時に消化器病学会専門医、消化器内視鏡学会専門医、肝臓学会専門医を持っていたが、近隣の医療機関との差別化を図るために、内視鏡は導入せずに肝臓病専門のクリニックとした。簡単な採血項目は短時間で結果が出るように、採血機器を導入した。」
-近畿地方、開業5年以上10年未満循環器内科
循環器内科
循環器内科の先生から寄せられたアドバイスのほとんどは、基幹病院との病診連携でした。これは集患というだけでなく、患者さんの安心感・治療効果にも繋がるため注力しなければいけない、というアドバイスが寄せられました。
病診連携
「基幹病院と病診連携をすること。医師会の会合には顔を出して、顔を覚えてもらうこと。そこで機関病院の専門や紹介の基準も覚えておきます。」
-近畿地方、開業10年以上15年未満
「近隣病院との連携をしっかりした方が良い。患者の口コミが意外と重要で、患者が患者を連れてきてくれる。」
-首都圏、開業5年未満
「緊急を有する症例を迅速に依頼できる基幹病院との連携がきわめて重要です。患者さんの安心感が違います。」
-九州地方、開業5年以上10年未満
218人の先輩開業医のアドバイスを振り返って
子供とその両親の来院を意識した施策が重要な「小児科」「耳鼻いんこう科」、病診連携が必須となる「循環器内科」、内視鏡検査が口コミのカギとなる「消化器内科」など、診療科によって大きく集患の工夫が変わることが、先輩開業医のアドバイスを通して見えてきました。
ですがどの集患の工夫も元をたどれば、その診療科に来る「患者さん」のニーズに応じることが起点となっています。診療科と地域の特性を掛け合わせると条件は様々で、集患施策で何が大事かを一般化することは難しいですが、どんな時でも「患者さん」のニーズが何かに立ち返れば、打つべき施策が見えてくるように思います。
218人の先輩開業医へのアンケートを通して、集患について考えてきた本連載は本記事が最後になります。紙面の都合があり、ご紹介できなかったアドバイスも沢山あります。本調査にご協力いただいたMedPeer会員の218人の先輩開業医の先生方には、この場を借りて篤く御礼申し上げます。
「MedPeerクリニック開業・経営」編集部では、MedPeer医師会員の先輩開業医のご知見をお借りして、これから開業を志される先生、既に開業をされている先生の開業・経営のお役に立てるような記事をお送りして参りたいと思います。
これからも引き続き、MedPeerクリニック開業・経営を何卒よろしくお願いいたします。