開業事例インタビュー記事

開業後のクリニックと薬局の連携のあり方とは

しんかなクリニック

しんかなクリニック

糖尿病を中心とした生活習慣病と内分泌代謝疾患を専門領域として、大阪府堺市のスギ薬局新金岡店2階に2020年2月開業した「しんかなクリニック」。生活習慣病の患者は治療を長く続けていくため、症状や特性に応じた薬の処方だけでなく、服薬を患者が継続できるかどうかという視点もポイントとなる。そこで重要なのが開業後にパートナーとなる薬局との関わりだ。「しんかなクリニック」では、医師、患者、薬剤師間のさまざまなコミュニケーションから得られる情報が、服薬管理や残薬管理に効果をもたらしたという。その連携の実態について、クリニック院長の片岡隆太郎氏と、メインパートナーとなるスギ薬局新金岡店薬剤師の盛岡洋平氏に話を聞いた。


開業後は、薬剤師との関わりも変化する
大阪労災病院など5カ所の医療現場で糖尿病・内分泌内科医として経験を重ねてきた片岡院長だが、開業後はやはり薬剤師・薬局との関わりに変化があったという。
例えば病院では

●入院時に患者の服用している薬を薬剤師が全て確認。入院主治医はそれをチェックした上で、ベストな処方を設計する
●院内のNST(栄養サポートチーム)などで薬の調整があった時は、薬剤師より報告を受けて対応する
などがメインの関わりであったのが、
開業後は

●退院患者を受け入れる時は、退院時の処方設計に対応できるかを薬剤師と確認する
●患者の状況を薬剤師と共に継続的に見守り、服薬を続けるのが難しそうな場合は、必要に応じて処方を変更する
というように関わり方が変わってきたという。

「入院時に主治医が設計したベストの処方が、必ずしも外来で対応できるとは限らないのが現状です。例えば、退院時にはインスリン注射を減らすための食前薬がよく処方されるのですが、1日3回の食前薬を長期で続けるのは患者さんにとってハードルが高いこともあります。そんな時は薬剤師さんとも状況を見ながら、現状でベストな対応をとるようにしています 」(片岡院長)


残薬確認は薬剤師と協力しながら実施
来院する糖尿病患者には高齢者も多く、薬の飲み忘れに伴う残薬確認は大きな課題になっている。
「1日に2回、3回服用の薬を処方すると、昼、夕を飲み忘れる患者さんがどうしても出てきてしまいます。飲み忘れ回数も少なくて、残薬もきちんと把握している患者さん以外は、何らかのフォローが必須です」(片岡院長)
診察時に院長が患者に残薬を確認し、 

●患者が自分で残薬を把握している時は、処方箋の医師コメントに残薬状況を記載する
●残薬の把握が難しそうな患者がいれば、薬剤師と情報を共有する

それを受けて薬局側では
●処方箋がきたら薬剤師も患者に残薬を確認する。その時点で「残薬が把握できていない」「患者から聞いた残薬量が、医師から得た情報と乖離している」「残薬がだんだん増えている」「一包化しても飲み忘れがある」といった問題があれば、医師に文書で情報提供し、医師と薬剤師で共有した情報をもとに、対処方法を考えることになる。


「まずは残薬調整が必要ですが、患者さんの状況を見て、1日に服用する錠数を少なくできるところは少なくする、例えば1日3回の薬を朝夕の2回にするなどの対応ができないかなどを、薬剤師さんと検討します」(片岡院長)
「診察室ではいい格好をして残薬を少なめに申告するのに、薬局に来ると『実はこれだけ残っています』と言う患者さんや、『どうしても甘いものがやめられない』など、先生には言えないことを薬剤師にぽろっと話される方もいます。このように先生にとっても必要だと判断した情報は共有するようにしています」(盛岡氏)
「フィードバックは他の薬局からもありますが、やはり1階のスギ薬局さんからの情報提供は密ですね。『昼と夕の薬がこれだけ余っているのでよろしくお願いします』と処方箋にコメントしただけでも、具体的にどう対応するか、日数をどうするかなど細かくフィードバックしてくれます。私もこの患者さんは注意が必要だと思えば、診察後に1階に降りて行って盛岡さんに『この患者さんは気をつけて見守る必要があるので、薬局でも注意してください』と、お願いすることもあります」(片岡院長)


外来服薬支援で踏み込んだ対応も可能に
「高齢の患者さんの場合、 服薬管理や残薬の把握がご自身では全くできていないことも珍しくありません。注射製剤の使用期限の見方さえ「わからない」という患者さんもいらっしゃいますし、残薬や残っている注射器の本数について、先生や私に伝える数字がかなり違っていて、どちらが正しいのか判断できないこともあります。2022年4月の調剤報酬改定で、先生の指示のもと、患者さんのご自宅に薬剤師が伺って実情を確認して服薬指導することが可能になり、これまでより一歩踏み込んだ対応ができるようになりました」(盛岡氏)
なぜ薬が飲めないのか、原因がどこにあるのかを丁寧に患者や家族から聞き取り、服薬管理や残薬の把握が難しい患者には、お薬カレンダーをセットするなどの対応をし、医師にも状況を細かくフィードバックしているという。
「残薬調整も状況に応じて行っていますので、患者さんの負担減にもつながっています」(盛岡氏)。
スギ薬局新金岡店には訪問看護ステーションが併設されており、新金岡店所属の薬剤師は在宅訪問にも従事している。「在宅医療に関わっていない薬局だと、患者さんの自宅に伺うのはかなり敷居が高いのではないでしょうか。我々は自宅訪問にも慣れていて、問題解決のノウハウも多く持っていますので、外来服薬支援にもその経験を生かすことができていると思います」(盛岡氏)

 


薬剤師と密に連携することのメリット
「しんかなクリニック」と「スギ薬局新金岡支店」のように、医師と薬剤師の連携が深まることによって、患者のアウトカムの向上につながることもあるだろう。片岡院長は、連携によって実感したメリットとして

●患者が医師には言わないことを薬剤師から聞けることがある
 →患者の特性や日常生活を把握しやすくなり、アプローチの工夫ができる
●残薬調整が容易になり、患者の負担を減らせる
●患者が飲み続けやすい薬を効果的に処方できる
●バイオシミラーなど、新しい薬や製品の導入時に、患者から使い勝手についてのフィードバックが入りやすくなる
などを挙げている。

 

実際に連携で効果があった直近の糖尿病患者の例を聞いてみた。
糖尿病患者Aさん(60代男性)
・退院時、1日3回の食前薬を入院主治医より処方される。
・以前から朝は飲めても昼夕を飲み忘れることがある患者だったので、注意して見守ることを薬剤師と共有。
・やはり3カ月くらいで、「残薬が大量にある 」ことを薬剤師との連携で確認。
・最新薬ではないが、1日1回でよいタイプに変更。
結果、服薬は何とかできるようになり、数値も改善した。


今後は栄養指導も再開したい
開業後、しばらくはスギ薬局常駐の管理栄養士・薬剤師と協力し、患者への栄養指導も行っていたという。
「糖尿病患者さんへの栄養指導は、どんな段階であっても非常に重要で欠かせないものです。最近はより効果が期待できる薬がたくさん出てきていますが、いくら良い薬を飲んでも、食生活が乱れていると効果が出ません」(片岡院長)
「管理栄養士は、患者さんとのコミュニケーションに長けています。また栄養指導なら30分と長めに時間が取れるので、患者さんが医師や薬剤師にも話さないような日常の習慣や食事の情報などを拾い上げてくれることが多々あり、より有効な提案をするのに役立っています」(盛岡氏)
「新型コロナウィルス感染症のため個室で30分指導することが困難となり、栄養指導はストップしたままになっているのですが、状況が落ち着けばぜひ再開したいですね」(片岡院長)
以前の栄養指導では、病状改善につながったケースが何例もあったとのこと。
「対面だと出てくる『雑談レベルなのに実は重要な情報』が、リモートでの指導だとなかなか聞けなかったりするので、やはり対面指導が再開できる状況を待ちたいですね」(片岡院長)

書面やメール、電話だけでなく、実際に対面してコミュニケーションが取れることも、密な連携の秘訣ではないだろうか。
薬剤師・薬局との連携が取りやすく、状況が許せば管理栄養士との連携も図れるというのは、スギ薬局のクリニックテナント内にあることのメリットの一つと言えるだろう。

取材・文/清水真保

 

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