医院開業コラム記事

開業するなら戸建て?テナント?(後編)~テナントの形態もさまざま、それぞれのメリットは?~

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前編では「戸建て開業」と「テナント開業」のメリット・デメリットを比較検討しましたが、後編ではテナント開業について、もう少し掘り下げてみようと思います。一口にテナントと言っても、種類はさまざま。それぞれの特徴や、良い点、気をつけたほうがいい点について考えてみましょう。

昔ながらのテナント以外に、医療特化のモールも

かつてはテナントといえば商業ビル内が多かったイメージがありますが、最近では医療モールや大型ドラッグストアに併設されたテナントも増えています。集患、設備、多職種連携のしやすさなどの面から、それぞれを比較してみましょう。

●単独テナント

駅前や商業地のビル、大型ビル内などで開業するのが単独テナントです。ビル内にクリニックは1つだけということも、同一フロアに複数のクリニックが入居していることもあります。

一般的に利便性の高い立地にあるため、患者が来院しやすいのが大きなメリットです。特にターミナル駅隣接のビルや大型商業ビルの場合は知名度も高いですし、集客力の高いテナントが同じビルに入居していれば、集患・宣伝効果につながるかもしれません。また単独テナントは物件数が多いのもメリットですが、一般的に契約期間が短く、更新料が頻繁に必要になります。また、エリアによっては、かなりの確率で周辺(または同ビル内)に競合があることは心に留めておいた方がいいでしょう。

医療モールやドラッグストア テナントと違い、クリニック入居を想定した設計・設備にはほぼなっていないので、電気容量、給排水設備、空調・換気設備が不足していたり、バリアフリー対応ではないなどの問題で、初期投資がかなりかかったりすることもあります。物件によりますが、駐車場を確保するのが難しい場合も。患者やスタッフが増えても、待合室を広げたり、休憩スペースを確保しづらいことがあるかもしれません。

こう並べると、デメリットが多いようにも感じますが、単独テナントは物件による差が大きいので、求める条件に合うかどうかはしっかり見極めましょう。

●医療モール

医療モールとは、診療科目が異なるいくつかのクリニック(と調剤薬局)が入居する建物のことをいいます。

複数のクリニックが入っているため、単独で開業する場合と比べて医療機関として地域への認知度も上がりやすく、相乗効果による集患力が期待できます。クリニック入居を想定した設計がなされているため、エレベーターが設置され、バリアフリーにも対応しているなど、患者ファーストの動線が充実していることが多いのも魅力。また、これはケースバイケースですが、トイレや駐車場、看板などの設備の共有や、医科機材や消耗品を共同購入することでコストが削減できることもあります。

前編でも紹介した、開業物件を決める際に何を重視するかを医師に尋ねたアンケート結果では、「連携施設との関係性や距離」を挙げた回答もありました。複数の科と調剤薬局が入居する医療モールでは、それぞれと連携しやすいというメリットも。例えば糖尿病の患者を内科と眼科で連携して診るということもできるでしょう。

一方で、もしも同じモールに入居する他クリニックや調剤薬局の評判が悪ければ、その影響を受けるかもしれないこと、医療モールの紹介企業によっては、決まった業者しか利用できないという制約があることも覚えておきましょう。

最近注目されつつあるドラッグストア併設型

ビル内のテナント、複数のクリニックが集まる医療専門のモールのほかに、もう一つ注目されている形態が、大型ドラッグストア併設のテナントです。そのメリット・デメリットをみてみましょう。

●ドラッグストアテナント

大型ドラッグストアの店舗の2階や敷地内などで開業する形態。近年のドラッグストアは、医薬品やヘルスケア用品だけでなく日用品や生鮮食品まで扱う大型店も増えており、地域の生活インフラ中核店として来店客数がかなり多い店舗も珍しくありません。周辺に周知を図り、集患するのにかなりの期待が持てます。また交通量が多い道路沿いや、車でアクセスしやすい立地にあり、人目に付きやすいのも特長。大型駐車場併設の店舗が多いのも利点になるでしょう。

集患面でいえば、物販戦略で培ったドラッグストアのマーケティング力が活かせるのもメリットの一つ。開業後にどれくらいの集患が見込めるかの診療圏調査協力はもちろん、開業時の認知度を高めるためのノウハウの提供協力も望めます。開業後も、ドラッグストアと提携したイベント開催などが可能です。

設備面はどうでしょうか。クリニック入居を前提として設計されているため、医療モール同様に、エレベーター設置やバリアフリー設計など、患者が来院しやすいような動線が採用されていることが多いようです。

そしてドラッグストア併設型ならではの特長としてあげられるのが、調剤薬局の薬剤師や、ドラッグストアに在籍している栄養士と連携を取りやすいこと。処方薬のリクエストや相談、患者の栄養指導など、医師側にも患者側にも有用な取り組みができます。

考えておかなければならないのは、併設のドラッグストアの評判に影響されることがあるということ。万が一、ドラッグストア側に何かトラブルが起こった場合、集客が落ちることもあり得ないことではありません。

また、店舗にもよりますが、この業者を使って欲しいという指定があることも。そこは確認しておきましょう。

 

文/清水真保

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