開業支援コンサルタントコラム記事

トレーシングレポートを用いた医師と薬剤師の連携

近年、日本では、少子・高齢化が進んでおり、このままでは医療制度において様々な問題が起こると言われています。それらの問題を解消するために患者様を中心とした多職種連携による地域医療が求められています。地域医療の担い手としてこれから開業される医師の多くが地域のかかりつけ医となります。

かかりつけ医とは、「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義されております(出典:厚生労働省 上手な医療のかかり方.jp)。また「かかりつけ医機能」として、下記の機能が求められています。

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1. かかりつけ医は、日常行う診療においては、患者の生活背景を把握し、適切な診療及び保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する。

2. かかりつけ医は、自己の診療時間外も患者にとって最善の医療が継続されるよう、地域の医師、医療機関等と必要な情報を共有し、お互いに協力して休日や夜間も患者に対応できる体制を構築する。

3. かかりつけ医は、日常行う診療のほかに、地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加するとともに保健・介護・福祉関係者との連携を行う。また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する。

4. 患者や家族に対して、医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う。

(出典:「医療提供体制のあり方」日本医師会・四病院団体協議会合同提言平成25年8月8日)

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 2022年度診療報酬改定で「かかりつけ医機能の評価」について、外来医療は「まず地域のかかりつけ医機能を持つクリニックや中小病院を受診し、そこから高機能病院の専門外来を紹介してもらう」という流れを強化する「外来医療の機能分化、連携の強化」が重視されています。このうち医療へのファーストアクセスとなる「かかりつけ医機能を持つ医療機関」については、地域包括診療料・加算や機能強化加算など様々な診療報酬で評価されており、今後もかかりつけ医機能の評価が続くと見込まれています。

次に地域医療において重要となるのが薬局との連携です。薬剤師も医師同様に地域のかかりつけとなることが求められています。

医薬分業が始まって以来、医療機関と薬局は門前薬局といわれるよう立地中心の関係が続いていました。本来の医薬分業の趣旨である、薬局の薬剤師が専門性を発揮して、患者の服用薬について一元的な薬学的管理を実施し、これにより、多剤・重複投薬の防止や残薬解消なども可能となり、患者の薬物療法の安全性・有効性が向上するほか、医療費の適正化にもつながるよう、薬局の在り方が門前薬局からかかりつけ薬局への変革が求められています。厚生労働省から「患者のための薬局ビジョン」で以下の3つの機能が求められていることが示されました。

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1.ひとりの薬剤師がひとりの患者様の服薬状況を一カ所の薬局でまとめて管理し、かつ、それを継続して行う機能

2.24時間対応や、患者様の自宅にお伺いして在宅医療を行う機能

3.処方医や医療機関と連携する機能

(出典:「患者のための薬局ビジョン」~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~平成27年10月23日)

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今までご説明させていただきました通り、医療機関と薬局との連携は患者様を中心とした地域医療において重要な取り組みであることがお分かりになるかと思います。

では、医師と薬剤師の連携とはどのようなイメージを持たれていますでしょうか?連携方法、内容は様々ありますが、その中でも最近増えているのがトレーシングレポートというツールを用いた連携です。トレーシングレポートとは服薬情報提供書のことで、薬剤師から医師へ情報共有を行うことが主な目的となります。医師の視点から見ると、トレーシングレポートのやり取りをすることが薬局との連携の第1歩となりますので、スギ薬局での事例を参考にしていただき、イメージを持っていただければと思います。

①80代女性。市立病院で糖尿病の治療、クリニックでは循環器の治療を行っている。市立病院ではグリクラジド・その他、クリニックではバイアスピリンなどの他にブドウ糖が処方されている。副作用で低血糖の症状である動悸・冷汗があるためクリニックからブドウ糖をもらっている。トレーシングレポートにて市立病院へ、副作用の低血糖が出ていることを報告、合わせてグリクラジドの用量の再評価を提案。次回の処方時にグリクラジドの処方が削除となった。その後低血糖は出現しておらず、血糖値も問題なくコントロールできるようになった。

②てんかんの患者様。残薬があったためビムパッド削除後、 てんかん発作頻度が増加となった。トレーシングレポートにて他の薬剤にも残薬があることから、コンプライアンス低下による症状悪化の可能性と飲み忘れ防止のため、一包化を提案。次回の処方時に一包化の指示、コンプライアンスの向上につながった。

薬剤師から医師へのトレーシングレポートを紹介させていただきましたが、イメージができましたでしょうか?このように薬局との連携をしっかりと行っていくことでリスクの防止、治療効果を最大化でき、結果として処方医師の信頼の獲得、集患につながるようになります。

これから開業される先生は開業までに近隣の薬局とコミュニケーションを増やしていただき、連携方法などを事前に相談しておくことをお勧めしています。薬局の方もどのように報告、連携しようか迷われていることもあるため、先生の方から声をかけていただくのもよいかもしれません。

DCPソリューションではクリニックの開業だけでなく薬局との連携実績も豊富なため、ご興味がある方はご相談いただけますと幸いです。

 

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