開業支援コンサルタントコラム記事

セルフメディケーションにおけるクリニックと薬局の連携

 セルフメディケーションとは、世界保健機関(WHO)において「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されています。日ごろから自分の健康状態を把握しながら生活習慣の改善に取り組むにあたり、薬局の薬剤師はOTC医薬品を中心としたサポートを行うことが求められています。特にドラッグストアの薬剤師においてはOTC医薬品だけでなく、生活に関わるあらゆる商品を取り扱っておりますので、サポートの範囲は一般的な調剤薬局よりもさらに大きくなります。

そんな中、医師の視点からの心配の声として挙がってくるものが「自己判断によって重大な疾患を見逃すのではないか」ということです。重大な疾患の初期症状がOTC医薬品によってマスキングされてしまい、重症化するまで気づくことができない、ということが危惧されています。また困った声として挙げられているのが「こんな軽い症状で医療機関を受診しないでほしい」ということです。特に医師不足が叫ばれる昨今、病院によっては一日に何千人もの患者が来院されるところもあります。より重症患者に注力をできるよう、軽度の患者はクリニック・診療所を受診いただく。さらに軽度であれば、薬局で市販薬を購入いただくなど、役割を分ける必要があります。つまり患者が自己判断をすることなく、症状・状態に合わせて、薬局クリニック病院と、正しく相談・受診をする体制が地域医療の正しい姿ではないかと考えます。

 ここで薬剤師に求められてくるものが、接客からの適切な受診勧奨です。これらについては、厚生労働省が公表している「患者のための薬局ビジョン」において、薬剤師・薬局が持つべき3つの機能のうち、医療機関等との連携の一つとして示されています。

    (厚生労働省「患者のための薬局ビジョン」

薬局・ドラッグストアに相談に来られるお客様の中で症状のある方の多くが、受診するべきかどうかについて不安に感じているので、薬剤師は相談された内容についてヒアリングを十分に行い、受診の必要性を判断する必要があります。

薬剤師の役割は、受診勧奨をして終わりではなく、医療機関へと適切に引継ぎを行い、さらには治療の経過までしっかりとサポートしていくという姿勢こそが、薬局があるべき姿なのではないかと考えています。いわゆる門前薬局は、特定の医療機関の応需が多くなる傾向があり、相談された症状が門前クリニックの専門外だった場合、他のクリニックに誘導することになります。その薬局がかかりつけ薬局となっていない場合、その後は来局いたくことができず、サポートは難しくなることが推測され、結果としては受診勧奨を行って終了となってしまっているのが実情ではないかと考えられます。また調剤専門薬局の場合、取り扱っている市販薬の種類も少ないため、薬剤師の知識、経験共に十分ではないことも課題と考えられます。薬剤師が受診勧奨を行い、治療の経過までサポートしていくためには、一人の患者の服用状況を一元的・継続的に管理ができるかかりつけ薬局であると同時に、薬剤師がOTC医薬品も含めたセルフメディケーションに関する知識、経験を持っている必要があるといえます。

 そこで今回、弊社グループのスギ薬局でのセルフメディケーションに対する取り組みと、医療機関との連携事例について紹介させていただきます。

ーーーーーーーーー◆◆事例◆◆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

10年前から全身に発疹が出始めて、痒みもひどく、症状は足、腕、背中など全身に広がっている。
過去に医療機関を受診したが、ステロイド外用薬+アレルギー内服薬の処方のみで改善が見られないため、受診せず市販のステロイドを塗って症状を抑えていた。
薬剤師からヒアリングを行ったところ、アトピー性皮膚炎の可能性があるため、医療機関での治療の重要性を説明し、連携しているクリニックを紹介。
ヒアリング事項を記載したメモをお渡しして、専門の医療機関での受診をしていただいた。
その後、処方せんをご持参いただき治療を開始。
継続的に通院いただくようになり、薬剤師による医師へのトレーシングレポートにて、薬の使用状況を報告。アドヒアランスの向上につながったことで、症状をコントロールできるようになった。

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セルフメディケーションにおける薬剤師と医師との連携事例を紹介させていただきましたが、どのように感じましたでしょうか?診断のできない薬剤師にとって、市販薬を販売するのか、受診勧奨をするか、の判断は難しいケースが多くあります。ただ市販薬を販売するのみで対応を終えてしまったり、市販薬は販売せず、すぐに受診勧奨をしてしまう薬剤師もいるといった話を聞く事もあります。薬剤師が市販薬に精通し、かつ薬局とクリニックがどちらも「かかりつけ」となっていればこそ、これらの連携はとてもスムーズになります。

これから開業される医師の皆様は、開業される前に薬剤師と受診勧奨という切り口でも話をしておくとよいのではないかと考えます。特に先生の得意な領域や、既に近隣に存在する別の診療科について、薬剤師と共有化しておくことで、さらに連携がスムーズとなります。

今回ご紹介した事例はほんの一例ですが、弊社グループのスギ薬局はドラッグストアを主体として、全国約1500の店舗があり、調剤併設率は85%以上を計上します。薬剤師は処方せん調剤のみならず、OTC医薬品販売の豊富な知識、ノウハウを有しており、今回紹介したような多数の実例も経験として蓄積しております。

地域医療の身近な窓口となる薬局として、グループ全体で開業のサポートをしていく事ができればと考えております。ご興味がございましたらお気軽にご相談いただけますと幸いです。

 

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