いまさら聞けない!電子カルテ
電子カルテの歴史
過去(1990年代~2000年代)
私たちの世代では『電子カルテ』という言葉自体に抵抗感がある人も結構います。……と、いうのも電子カルテが登場した1990年代頃はまだ、「これまでどおり紙に書けばいいのでは?」みたいに思ってたんです。
ただ、手書きの文字はどうしても誤読してしまう可能性があります。もしも「どの薬を処方するか」や「どの検査をするか」といった内容を読み間違えてしまったら、大問題ですよね。
だから、こうした課題を解消する『オーダリングシステム』や『検査システム』については、かなりの勢いで広まっていきました。『レセプトコンピューター(レセコン)』もそうですね。
しかし、当時はまだパソコンに慣れていない先生方が多かったので、電子カルテにはかなり疑念を抱いていたんです。「手書きからコンピューター入力に変えたら、むしろ時間がかかってしまうのでは?」と。実際、当時電子カルテを導入した先生の中には、紙カルテを使っていたときに比べて3倍もの診察時間が必要になってしまった人もいたからです。
現在(2010年代)
現在はデジタルネイティブ世代の先生方も多いですし、携帯電話(ガラケー)やスマートフォン(スマホ)といったデジタル製品の普及もあり、抵抗感を抱く人は少なくなりました。むしろ、日常生活でも手書きをすることがほとんどないからか「電子カルテじゃなきゃ無理」みたいな先生が多いです。
ただ、「パソコンがなければ診察できない」という状況になってしまうのはまずいなと思っています。例えば災害でパソコンが壊れてしまった場合、診察ができなくなってしまう可能性があるからです。そのため、今後はパソコンだけでなく、スマホやタブレットなどでも使用できる電子カルテも必要になってくるのかなと思います。
未来(2020年代~)
電子カルテは、『いろいろな医療機器とつながる医療システムの一部』を指す場合と、『紙カルテ(いわゆる2号用紙)と処方箋を電子化したもの』を指す場合があります。今後さらに広まっていくと考えられる電子カルテは、前者です。後者の機能だけでいいのなら、わざわざシステムを使う必要はありません。ワープロで作って印刷すればいいだけの話ですから。
大事なのは、「患者さんが来院予約をし、病院に来て受付をし、診察を受けて次回予約と会計をして、薬をもらって家に帰り、その薬を飲む」といった一連の医療行為が、きちんとシームレスにシステムとしてつながっていること。あくまで電子カルテは、このシステムのうちの一部にすぎません。
医療においてまず改善しなくてはならないのは、『スピード』だと思っています。そこが改善できれば、より多くの患者さんを診察できますから。患者にとっても、病院での待ち時間はストレスです。
今の病院のシステムには、30分くらいは短縮可能なバッファがあると思っています。私も先日、最先端のシステムを使っている病院を受診したのですが、診察が15分で終わったにも関わらず、会計に2時間もかかったんです。その日は混雑していましたし、計算がややこしいものが多くて時間がかかるというのもわかるのですが……。
我々としては、今後は素早い会計システムだとか、予約システム、診断システムなども実現したいと考えています。それらと電子カルテが連携したシステムができれば、新しい日本の医療モデルになっていくのではないでしょうか。