いまさら聞けない!電子カルテ
電子カルテの課題
電子カルテ業界自体、参入障壁が高いんですよね。専門知識の塊ですし、さまざまな法律規制もあるので、ブロックされてしまっているんです。
医師とも「コンピューター側の人たちと医療業界の人間はどうも合わないところがある」という話をしたことがあるのですが、医療っていうのは『1+1=2』にならないことが多いんですよね。でも、コンピューター側の人(プログラマー)は『1+1=2』にならないのは気持ちが悪いんです。プログラマーからみると、医療って本当に不思議なことだらけなんですよね。もちろん、逆もそうだと思いますが。
診療報酬点数表などを見ると、同じ検査をしても「~の場合は~を加算できるが、~の場合は加算できません」みたいな“IF”がすごく多いんですよね。こうした矛盾みたいなものが、コンピューター側の視点では気持ちが悪いというか、ややこしくて参入しづらいため、進歩が遅れているように感じています。これが課題の一つといえるのではないでしょうか。
とはいえ、我々がどんなに「ルールを変えましょう!」と言っても、ほぼ全て法律で定められていることなので、そう簡単に変わるものではありません。ですから電子カルテの普及も含め、医療が完全にIT化するのは、かなり体力と気力がある企業が関わらないと難しいでしょうね。
電子化そのものだけでなく、現在主流のオンプレミス(院内サーバー型)からクラウド(外部サーバー型)化させていくのにも課題があります。医療業界って、例えばまだフロッピーディスクが現役だったりするんですよね。一般的にフロッピーが使われていたのは90年代の初めくらいまでだと思うんですけど、20年弱たった今でも使っているような業界なんです。
ただ、こういうものは案外指数的に進みます。だから、最初はゆっくりかもしれないですけど、臨界点を迎えると一気に伸びるはずです。自分の予想では、2020年くらいからオンプレの販売個数が徐々に減り、2030年には完全にクラウド化する……、という感じでしょうか。
例えば携帯電話は1980年代に登場し、1990年代後半から流行しはじめたと思うのですが、そこから一気に広がって、今では一人一台持つほど普及していますよね。
広がりはじめると、そこからは速いんですよ。クラウド型電子カルテも、同じように指数的に広がっていくはずです。
今後は医療情報がフォーマット化されていくので、電子カルテの乗り換えも可能になると思います。「より使いやすいものにしたい」とか「より付加価値が高いものがいい」とか、先生方が好みで選んで使えるような世界になるんじゃないでしょうか。同じ病院内でも、「この先生はこのA社のカルテを使って、この先生はB社のカルテを使う」みたいな未来もくるかもしれませんね。
そんな未来がくれば、本当の意味でクラウド化したメリットがあるといえるんじゃないかなと思っています。