医療のわかる税理士の選び方
医療法人における税務支援
第7回のテーマは、「医療法人における税務支援」です。
医療法人は、医療法に基づく法人であることから一般事業所とは異なる取り扱いが求められます。
法人税法上、役員に支払われる給与のうち損金に算入される給与は、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」のうち適正な部分とされています。法人税法の取り扱いを熟知し、一定の手続きを踏んで慎重に役員報酬を決定しなければなりません。今回は法人税法の基本的な取り扱いについて解説します。
医療法人の役員、理事の報酬の基本
医療法と法人税法の役員の範囲の違い
医療法では、「医療法人には、役員として、理事3人以上及び監事1人以上を置かなければならない。」(医療法46の2(1))と定めています。したがって医療法上は「理事」と「監事」が役員に該当します。
法人税法上の役員とは、理事、監事、及び医療法人の使用人(職制上使用人としての地位を有する者に限る)以外の者で、その医療法人の経営に従事している会長、相談役、顧問役等をいいます。
<注> 医療法人は、同族会社の規定は適用されず、同族会社のみなし役員規定の適用はありません。
使用人兼務役員
法人税法は、使用人兼務役員を、役員(理事、理事長その他政令で定めるものを除く)のうち、事務長、マネージャーその他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものと定めています。
具体的には、次のすべての要件を満たす必要があります。
(1)理事長、専務理事、常務理事以外の役員であること
(2)院長、事務長、マネージャーなどその他法人の使用人としての職制上の地位を有すること
(3)常時使用人としての職務に従事する者であること。
法人税法上の役員賞与
法人税法では、損金算入が認められる役員給与の3類型として以下の様に定められています。
・定額同額給与
・事前確定届出給与
・利益連動給与(医療法人では、剰余金の配当禁止規定により利益連動給与は認められないと考えられます。)
過大役員給与
役員給与に該当するものは、原則として損金の額に算入しますが、そのうち不相当に高額な部分は、損金の額に算入しないこととなっています
過大役員給与の判断基準
・実質基準:役員給与の額がその職内容からみて役務提供の対価として不相当に高額であるかどうか。
・形式基準:役員給与の額が社員総会又は理事会で決議した限度額、または定款に定めている役員給与の限度額を超えているかどうか。
未払い金の取り扱い
法人税法上の債務確定基準の要件を満たし、未払金の計上が租税回避目的ではなく、資金繰りの関係から生じたもので短期間に解消されるような合理的な理由がある場合には損金として認められますが、支給額を未払金に計上して長期間支払われないような場合には認められません。
役員報酬決定の手続き
役員報酬、賞与、その他の職務遂行の対価としての医療法人から受ける財産上の利益について次に掲げる事項は、定款にその事項を定めていないときは、社団の場合には社員総会、財団の場合には理事会の決議により決定します。なお、役員給与のうち、形式基準を満たさないものは法人税法上損金として認められませんので、社員総会及び理事会の議事録を証拠書類として備えることが大切です。