開業医のためのクリニックM&A

医療法人と個人開業のM&Aの違いを知る

第7回のテーマは、「医療法人と個人開業のМ&Aの違いを知る」です。


M&A成功に欠かせないポイントは、クリニックM&Aの承継パターンを知ることです。承継するクリニックの形態によってM&Aのスキームが違ってくるため、準備の仕方や考え方、引継ぎ方法も異なってきます。


個人事業のままで継承するパターン


個人開業のМ&Aは、「資産売却」というかたちでクリニックを譲渡します。これは、中古の家を購入するのと同じようなイメージです。引き継ぐのは、クリニックの建物や医療機器だけで、資産以外の負債などは原則引継ぎません。前の家のローンを次の家主が引き継がないのと同じです。


譲渡価格は「固定資産の時価」に「のれん代」を加えた価格になるのが基本です。個人開業のM&Aで注意したい点は、従業員との雇用契約とカルテは原則引き継がれないところです。従業員を引き続き雇いたい場合は、新経営者との間で新たに雇用契約を結ぶことになります。


また、買い手側は、診療所開設届を新規に提出する必要があります。売り手は同じ時期に診療所廃止届を提出します。この手続きには、各地で決められたタイムスケジュールがあり、おおよそ2ケ月ほどの期間を必要とします。


カルテの引継ぎについては、原則不可ですが、一定の引継ぎ期間があれば認められる場合もありますので、行政(各厚生局)との相談が必要になります。


課税関係では、個人名義のクリニックの不動産(土地建物)を譲渡することで、譲渡所得税が発生します。不動産以外に棚卸資産などを譲渡する場合に、譲渡価格と帳簿価格が同額であれば利益が出ないので課税は生じませんが、帳簿価格より高い価格で譲渡して利益が出るような場合は、その利益に対して20%の所得税と住民税が課税されます。


次に旧法の医療法人のМ&Aについて説明します。「出資持分譲渡」によってクリニックを継承した場合は、これまで通り診療を続けていくことが可能です。


ただし承継前から医療法人が保有している資産や負債はもちろんのこと、継承前に行われた診察に関する責任や税務処理、労務管理に関する責任もそのまま引き継ぐことになります。カルテや従業員との雇用契約も原則継続されます。


継承前の事項に関して責任が問われることは、買い手側にとってデメリットかもしれませんが、それ以外の引継ぎが大変スムーズなことから、個人開業より承継しやすいと言えるでしょう。


医療法人の譲渡価格は、「純資産」「のれん代」が基本です。医療法人の場合ものれん代は個人開業と同じ考え方ですが、医療法人の場合は、負債やリスクなどマイナスの要素も引き継がれるため、査定はより複雑になります。


譲渡における課税では、個人の場合では、所得税での処理となります。これは、一般の株式の売却したときと同じ取り扱いです。例えば、出資額が500万円だったものを2000万円で譲渡したとすると、差額の1500万円に対して譲渡所得税がかかります。

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