医療のわかる税理士の選び方
医療機関ならではの税務
第3回のテーマは、「医療機関ならではの税務」です。
医療機関は、税金の扱いが一般事業所とは少し異なります。医療機関の売り上げは、外来窓口収入のみならず、市町村などの公的機関や医師会、保険会社や製薬企業など多岐にわたります。そして、税務申告に際して一定の区分を行わなければならず、事業税の計算方法も一般事業所とは、異なります。
医療法人は、会社法ではなく医療法という法律により規制されています。
(医療法とは、国民が安心して医療を受けるための法律です。)
医療法の目的とは、以下になります。
・医療を受ける者の適切な選択の支援・利益の保護
・医療を提供する体制の確保
・病院・診療所・助産所の開設・管理・整備
・国民の健康保持に寄与すること
医療法では、これらの目的の達成のため、病院・診療所・助産所の定義や開設・管理・整備の方法、国・自治体の責任などが定められているのです。
例えば、医業に関する広告制限に関しても規定されていますが、ホームページはこれまで医療法上「広告」と見なされていないことから規制の対象ではありませんでした。
ただし、2017年の6月に行われた第八次医療法改正において、ホームページの一部も規制対象となることが新たに定められたのです。ホームページそのものは規制の対象にならないものの、誇大広告や比較広告と判断される表現があれば、医療法違反となりました。
法人税法上の法人の種類
法人税法上の法人は、普通法人、公共法人、公益法人等及び協同組合等 に区分され、それぞれにおいて、異なる課税関係 が定められています。医療法人は、社会医療法人が収益事業の所得のみに課税がなされる公益 法人等に該当し、他の医療法人は全所得に対して課税がなされる普通法人 に該当します。
医療法人には、経過措置型医療法人である持分の定めのある医療法人と、 持分の定めのない医療法人とがあります。持分の定めのない医療法人には、 財団医療法人と、持分の定めのない定款を定めた社団医療法人が該当します。持分の定めのない医療法人は、資本金等の額の定めのない法人であり、 交際費課税、寄附金課税、中小法人の判定、法人住民税の均等割などにおいて、持分の定めのある医療法人と課税関係が異なります。
余談にはなりますが、平成31年10月から消費税率が10%にあがり、食料品等については軽減税率が導入される予定です。
消費税の改正に当たって、食料品などの軽減税率に関する報道は頻繁にとりざたされていますが、医療に関する消費税については特段話が出ることはありません。それは、社会保険診療については消費税導入当初から非課税とされているからです。
この非課税ということが、実は医療機関経営に大きな影響を及ぼしています。いわゆる「損税問題」というものですが、簡単にいうと、医療機関が医療材料などを仕入れたときは、消費税は転嫁されているが、医療機関では、売上のほとんどが非課税であることから、売上に係る消費税がなく、仕入に係る消費税が相殺できない状況になってしまっています。
これにより、医療機関の消費税負担は重くなり、経営を圧迫する要因にもなっています。医療機関の運営を考慮して、消費税率の改定時には、診療報酬のプラス改訂という形で、国は対応してきました。しかし、度重なるマイナス改定があった経緯を踏まえると、消費税率の増税分が、本当に診療報酬に上乗せされているかは疑問が残ります。