クリニックのトラブルを防止する就業規則とは

退職と退職金

第7回のテーマは、「退職と退職金」です。


退職にまつわるトラブルは、たいてい退職した後に起こります。代表的な例は、退職後に「自己都合退職」ではなく、解雇だと訴えてくるものです。私の経験した中で、退職後半年以上もたってから突然言い出したケースもありました。会社都合の解雇を主張することで、慰謝料や解決金を得るのが目的です。


会社都合の解雇を主張してくるトラブルでは、退職届の有無が重要になってきます。就業規則では、書面でもって退職の意思表示をするように記載します。退職届は、原則自筆ですが、少なくとも署名捺印は必ず必要です。


要点を押さえた退職届があれば、事業所が不利になることはまずありません。退職時のトラブルの懸念がある時は、従業員との話し合いにより、退職届に加えて、退職合意書を締結する場合もあります。


では、退職合意書に記載すべき項目とは何なのでしょうか。以下は記載すべき事項です。


1.賃金債権債務の有無 退職する月の給与、賞与、退職金について明記する。

2.賠償責任の有無 労使双方に賠償責任があるか無いかを明記する。

3.守秘義務 仕事で知り得た情報について、他言しないことや今後使用しないことを明記する。

4.競業避止義務 同業他社に雇用されたりできないという協業避止義務を負っています。

(職業選択の自由もありますので、競業避止義務は完全に禁止することはできません)


さて、退職が決まれば、次は退職金です。


退職金は、就業規則では絶対的記載事項ではありませんが、ほとんど場合において記載されています。日本的労務慣行では、終身雇用制度と共に大きな意味を持つのが退職金制度であると言えます。


退職金の支給基準は様々ですが、最も多く採用されている基準は、医師会基準です。その基準では、3年を経過した職員に対して、基本給の8割に係数をかけて支給しています。


例えば、5年で退職した職員の場合は、以下となります。

基本給180,000円×0.8×2(5年-3年)=288,000円


退職金の支給額は、上記の通りですが、就業規則のポイントとしては、パートタイマーには支給しない旨を記載する必要があります。就業規則上、支給しないと記載しておいて支給するのは問題ありませんが、明記しなければ、請求される恐れがあります。

 

実際に長年勤務したパートタイマーから、常勤と同等の退職金を要求されたケースもありました。


もう一つポイントとしては、退職金の減額を記載しておくことです。不幸にしてトラブルを起こした職員が退職する場合でも、就業規則の減額の規定がなければ、退職金をカットしたり減額したりすることができません。さらに、退職時に十分に職務の引継ぎが行われなかった場合にも、減額できる条文も付け加えておく必要があります。


あと、退職金ではありませんが、残った有給を退職時に買い取る制度もあります。退職前までに有給を使い切るのが原則ですが、諸藩の事情から有給が残った場合に、消えてゆく有給を買い取ることは合法的で問題ありません。

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