開業医のためのクリニックM&A

クリニックM&Aなら人生の選択肢が広がる

第8回のテーマは、「クリニックM&Aなら人生の選択肢が広がる」です。


さて、このシリーズも最終のテーマとなりました。


クリニックの承継では、しばしば後継者不足が問題になると説明をいたしました。しかし、必ずしも親子継承にこだわらなくても、M&Aを使えば自然なかたちで継承していくことが可能になります。


リタイヤ後の人生プランもいろいろあります。こシリーズの最終章として、実際のM&Aの事例をご紹介いたします。


<事例1>自分にあった診療サイズで生涯現役を貫く医師


内科診察を続けてきた70代の開業医Aが、後継者不在のため、自身の医療法人のM&Aを考えました。対象の医療法人は、もともとは重症患者の救急診察も行う比較的規模の大きな有床診療所でしたが、院長の高齢その他の理由から年々診療範囲を縮小しており、M&Aの時点では無床診療所になっていました。


ただ、A医師はクリニックの院長を退いた後も完全なリタイヤではなく、細々でもいいから体が続く限り医療は続けていきたいという希望を持っていました。


具体的には、これまで往診で関わってきた患者を引き続き診ていくために、在宅専門クリニックのごく小規模な診療所を開業し、自分のペースで医業を行っていきたいとのことでした。


ちょうどそのときA医師がM&Aを考え始めたとき、同じ県内で勤務医をしている40代のB医師が開業を希望していました。そこで、うまくマッチングができ、クリニック譲渡の条件やタイミングを計る準備段階に入りました。


A医師が計画的にM&Aに対しての準備作業を進めていたため、クリニックの引継ぎに十分な時間をかけることがきました。譲渡の1年ほど前からB医師が医療法人の理事の理事に加わり、週1日の診療を始めるかたちでクリニックに馴染んでいきました。そして徐々にB医師の診察日を増やしていく一方で、A医師の診察日を減らし、自然に引き継いでいったのです。こうすることで、院長交代による患者や従業員の抵抗感を極力少なくすることに成功しました。


<事例2>医療難民を出さず、地域にたたひとつの診療科を守った開業医


個人でクリニックを開業しているC医師は、以前より70歳でのリタイヤを希望していました。いよいよ60歳代も終盤に入った時点で、後継者が決まらずM&Aを検討することになりました。実は、このクリニックは、当該地区で唯一の診療科科目を持つクリニックであり、この地域には珍しい先進の医療機器なども備えていました。そういった理由から、地域一帯の患者を一手に引き受けていたのです。


経営的にも全盛期は収入2億円、利益ベースでも7000万円を超えていて、M%Aの直前も収入1億5000万円、利益4000万円という、個人開業のクリニックにしてはなり大きなものでした。


マッチング相手を探したところ、病院で長年勤務していたD医師から手が上が挙がりました。D医師は勤務していた病院で十分に昇進し、後進の教育や指導にも尽力したと自負しており、そろそろ故郷に戻って地元にために力を使いたいと考えていたのです。


そのD医師の地元がC医師にいる地域で、いわゆる「Uターン開業」です。しかもD医師の専門科目とC医師の診療科目が一致したのです。


お互いこれ以上はないという相手・タイミング・条件が揃いましたので、マッチングが成功し、実際の譲渡までスムーズに進むことができました。


上記は、ほんの一例ですが、吟味を重ねて実行するM&Aでは、売り手・買い手ともに満足度が高く、承継後もクリニックが存続していく可能性が高いということです。「承継するのは子でなければならない」「そうでなければ廃院だ」とう思い込みをいったん外し、もっと広い目で周りを見渡してみれば、M&Aのすばらしさが見えてくると思います。

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