開業医のためのクリニックM&A

患者を逃がさないための切れ目のない引継ぎとのれん代(営業権)

第6回のテーマは、「患者を逃がさないための切れ目のない引継ぎとのれん代(営業権)」です。


では、周囲の人たちへの配慮として何ができるのでしょうか?


M&Aで成功例に共通しているのは、現院長から次期院長へ、切れ目なくバトンタッチができていることです。そのためには、M&Aを挟んで前後1年ぐらい、現院長と次期院長が同じクリニックで働き、情報を共有しながら自然に診察や経営を引き継いで行きます。


休診することなく切れ目ない診療を行い、徐々にクリニックの引継ぎを行うわけです。すると患者も従業員も違和感なく院長交代の事実を受け入れるようになります。そして、何よりも患者をつなぎ止めるという意味では、非常に大きなポイントになります。


実際にあった事例では、次のようなことがありました。とある医療機関の院長が急死されました。まったく予期されていなかったこともあり、後継者を探すことに難航いたしました。その後、前院長が亡くなってから8ケ月後にやっと新院長が決まり、クリニックを再開いたしました。以前は、一日に100人以上の外来患者がありましたが、再開後は、1日30人まで落ち込みました。やはり8ケ月の空白は大きく、その後も苦戦が続きました。


M&Aのポイントである患者の引継ぎは、きわめて重要であります。完全に引き継ぐことはできなくとも、おおよそ70%は、引き継げることを前提にM&Aは、進みます。また、引き継げる患者数は、「のれん代」(営業権)の価格決定にも影響します。当然、多く引き継げる可能性が高いほど、「のれん代」は高くなります。


のれん代というのは、クリニックの将来性や収益性を加味した営業権のことです。周辺に競合が少なく常連患者も多く見込めるようであれば高くなります。また、反対に周辺に競合が多く常連患者が見込めない場合は少なくなります。


よく、営業権はいくらが適性であるかを聞かれます。これも、決まった答えはありません。「一般的企業であれば、3年間の利益金額相当金額が営業権のひとつの目安になりますが、医療機関は、その医療機関や場所に患者がつくよりも医師個人に患者がついています。したがって、一般企業よりも営業権は少なくなります。1年間の利益金額という話もよく聞きますが、これも一つも目安であって絶対ではありません。


例えば、院長がご高齢のため引退するような場合で、売上はあっても利益が出ていない状況では、利益からは算出できません。このような場合では、過去の3年間の売り上げから、平均の売上月額を算出して、その売上月額の1ケ月から3ケ月分相当額を営業権とする時もあります。過去3年間の平均売上金額と直近の売上金額を比較して、最近急激に売り上げが落ちた場合は、特に注意が必要です。その医療機関で何か問題が起きている可能性もあります。


いずれにしても、営業権は将来の価値から算出するため明確な基準は存在せず、売り手側の意向が強く反映されます。価格交渉でトラブルにもなりやすいため、M&Aの経験がある専門家にご相談されることをお勧めいたします。

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