開業医のためのクリニックM&A
大切なクリニックをつぶさなくて済むM&Aの手法
第2回目のテーマは「大切なクリニックをつぶさなくて済むМ&Aの手法」です。
まず、クリニックМ&Aとは何かについて確認しましょう。М&Aとは、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略で、企業の合併および買収の総称です。複数の企業が他の企業を買い取る買収などを意味します。М&Aは、親から子や親族間での継承とは異なり、第3者への承継として行われます。
クリニックM&Aには、承継するクリニックが個人事業であるか医療法人であるかなどの条件によっていくつかの形態がありますが、基本的なかたちはシンプルです。現経営者である旧院長(承継希望者)から、新たな経営者となる新院長(開業希望者)にクリニックを譲渡するものです。
院長が交替するだけなので、クリニックそのものは今まで通り地域に残り、引き続き診療が行われます。患者のため地域医療のためにクリニックは貢献し続けることができるのです。
つまり、大切なクリニックをつぶさなくて済むことができるのです。
では、どういった場合にM&Aを選択すべきかを改めて確認しておきます。開業医は高齢化によってまずはクリニックの継承を考えることになります。そこで、最初の別れ目は、後継者がいるかいないかです。後継者がいる場合は、子息に医師がいて後を継がせる場合は、「親子承継」となります。また、一緒に働いてきた副院長などの承継する意思がある場合も、そのまま継承を進めます。
問題は跡継ぎがいない場合です。こでは廃院かM&Aの道があるのですが、現在は後継者がないあい場合は、もうひとつМ&Aという選択肢もあることを忘れてはなりません。М&Aは、廃院より明らかにメリットの多い選択肢です。
では、廃院した場合とM&Aでクリニックを残す場合では、どうようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。具体的にみていみましょう。
廃院した場合
<メリット>
・自分の意志だけで決定可能
・後継者問題で家族を煩わせない
<デメリット>
・廃院するためのコストがかかる
・地域医療が失われる
・患者がかかりつけ医を失う(継続治療が必要な患者には、事前に信用できる転院先への紹介が必要)
・従業員が失職する
・廃院が近づくにつれ、従業員のモチベーションが低下したり、退職者が出たりすることがある。
M&Aによりクリニックを継承した場合
<メリット>
・廃院コストがかからない
・クリニック(譲渡益)を得られる
・後継者問題を解決できる。
・借入金などの対する個人保証や担保提供を外すことができる
・地域医療や患者に対して貢献し続けることができる
・(法人の場合)退職金、出資持分などがコントロールしやすく、創業者利益を得ることができる
<デメリット>
・後継者とのマッチングを考えなければならない
・望むタイミングで承継できない
・譲渡益に税金がかかる
廃院に比較して、M&Aのメリットが大きいことが分かります。デメリットとしてマッチングの問題がありますが、これはプロに任せることで負担やリスクを大幅に減らすことができます。